くらしに彩りを与える時間
映画が好きな私たち夫婦。子どもが生まれて、家族みんなで映画館に行くという新しい夢ができたのだけれど…。
映画好きな私たち夫婦。
子どもが生まれてから少し足が遠のいているけれど、そろそろ息子が大好きなキッズ向けアニメで、映画館デビューさせたいと考えていた。
家族みんなで映画を楽しむなんて最高じゃない?
だけど、初めての映画館は散々だった。
暗闇が怖かったのか、大音量に驚いたのか、上映が始まってすぐ、絶叫に近い泣き声をあげて息子は映画館から一目散に逃げだした。
「無理強いして映画館が嫌いになっても困るから、ね?」
息子を引き戻そうとした私を諭すように、夫が言った。
「あせらなくても、いつか3人で楽しめる日が来るよ」
久々の映画館、一番楽しみにしていたのは夫なのに。
でも、私は彼のこういう切り替えの早さを尊敬している。
あきらめきれない私は、自宅で映画館ごっこをはじめた。
来る日に向けての予行演習だ。
夫お気に入りの大画面テレビで、息子の大好きなキッズアニメをリピート放映。
プレートにおやつと飲み物を用意して「一緒に観ようよ!」と声をかける。
うん、なかなかいい感じ。
だけど、部屋の扉を閉めた途端、雲行きが怪しくなる。
泣くか、寝るか、パパを追って部屋から逃げ出すか。
映画館への道のりは、長い。
往生際の悪い私に、夫が言った。
「ちょっと雰囲気を変えてみるっていうのはどうかな?」
薄暗い部屋からテレビをコロコロと移動しはじめる。
リビングの窓際。日差したっぷりのウッドデッキから、画面が見えるように。
「じゃじゃーん!」
夫がレジャーシートを広げはじめると、息子もウキウキと外に飛び出して行く。
「映画はもっと自由に楽しまなくっちゃ。ね!」
息子はごきげんな様子で、アニメ映画に見入っている。
「実はさ、前に話したあのカフェのマスターに教えてもらったんだ。こういうテレビの使い方もあるよ、って」
うん、すごくいいね! 青空映画館。
息子からはさっそく「もっと見た~い!」とアンコールの声があがっている。
今度はもう少し日が暮れてから、挑戦してみようかな。
映画好き夫婦はその後、無事に夢を叶えられたのでしょうか?
この魔法のようなテレビには、皆さんの日々の生活にも、ちょっとした幸せを提供してくれるヒントがあるかもしれません