夢に向かって踏み出す時間
通学路でふと見かけた、心に引っかかる場面。
みんなにも考えてほしいと思っていた僕たちは…
僕は中学2年生。両親の影響もあってか、映画が大好きだ。
オンデマンドはもちろん、本棚一杯を埋めている父さんのコレクションからディスクを持ち出すこともしょっちゅう。なぜなら特典映像で「未公開シーン」「NGシーン」なんかが楽しめるからだ。中でも一番こころ踊るのは、「撮影風景」。ロケだと思っていたシーンが、実は特大規模のセットだったと知る驚き。完璧にメイクされた俳優たちの間をせわしなく行き来する撮影クルー。そして監督の「アクション!」の一声――それは魔法の舞台裏をのぞくようで、憧れの世界だ。
ある日、クラスメートのソウタと下校途中、駅前の一角でカラスがゴミを荒らしている場面に出くわした。僕たちを見たカラスが悠然と逃げ去った後には、あたり一面に散らかったゴミ。
「こんなところに捨てるからだよなあ」
ソウタのマンションでは金属の檻みたいなゴミ集積場があり、扉には鍵までかかっているという。
「たまに面倒がって扉の前にゴミを置いていく人がいると、すぐにカラスが集まってきて散らかすから大変なんだ」
みんながルールを守ったら、街もキレイになるのになあ。でも、知らない人たちのルール違反をいちいち注意して回るなんてできないし…そんなことを話しながら、僕たちはそれぞれの家へと別れた。
次の日の昼休み、ソウタが校内の掲示板の前で急に声を上げた。「ヒロト!これ、よくね?」
その指の先には、1枚のポスター。「『今、つたえたいこと』を映像にしてみよう!」と書かれている。
「自分たちで動画を撮るってこと?」
「コンテストを目指して作品を作るっぽいな」
そこには、カメラを手に何かを撮影中らしき同年代の生徒たちの写真があった。
「撮影も編集も自分たちでやるってことか」
「かっこいいな。まるでプロのカメラマンみたい…」
僕はそのポスターの中の「撮影風景」にくぎ付けになってしまった。
「あ、これ、いいよね。私も興味ある」
振り向くと、幼なじみのミオが立っている。
「私、将来シナリオライターになりたいの。こんな経験したら勉強になるかもね。ヒロトが監督?」
「俺はカメラマンだ」
「じゃあ俺が監督だな」とソウタ。「撮影テーマは、昨日見たアレ。街のゴミ問題!」
「まだ時間あるよな。今から先生に詳しく聞きに行こうぜ」
僕たち3人は職員室へ向かって少しだけ足早に歩き始める。その自分たちの姿を、校舎の屋上から見下ろした望遠ショットとして、僕は脳内のスクリーンに想像していた。
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